副業はバレルのか?実はバレない!?

一、はじめに

 副業を始める際、本業の会社にバレてしまうのかと一度は考えるのではないでしょうか。この点について解説していきます。

二、目次

副業は本業の会社にバレるのか

 副業がバレる可能性とは

 本当に住民税でバレる?

 疑われないための対策

 副業がバレたらどうなるのか

 

三、副業は本業の会社にバレるのか

1、副業がバレル可能性とは

(1)関係者に目撃される

(2)知人にばらされる

(3)住民税

2、本当に住民税で副業がバレる?

 結論から言えば、完全に副業だとバレルことはありません。副業の可能性を疑われる可能性があるに過ぎません。

○副業がバレル仕組み

 税務署へ確定申告

  ↓

 市区町村へ所得情報

  ↓

 住民税の計算・会社へ通知

  ↓

 会社が住民税額を把握

  ↓

 自社の給与所得に対する住民税額と通知された税額とを比較して税額が多いと気付く

  ↓

 他の収入があると疑う

 以上が住民税で副業が疑われる過程です。お気付きの通り、会社は住民税額を知りますが、それに係る所得の内訳は分かりません。そして、自社の給与所得に対して想定される住民税額と比較して初めて税額が多いと気付き、他の所得の存在に気付くのです。

 ここから言えることは、そもそも会社の担当者は、住民税額が多いことに気付かない可能性すらあり、気付いたとしても株の譲渡による所得や、FXによる所得の可能性もあるなかで副業による所得であると確信を持つことはほぼ不可能です。また、住民税額は、各種控除が減れば税額が増えるし、控除が増えれば税額は減るといったように、住民税額は、各種控除の影響も受けるため、住民税で副業を察知するのは困難です。

 したがって、住民税から直ちに副業がバレルことはないのです。強いて言えば、副業の噂がある場合などの根拠づけになるくらいかと思います。

3、疑われないための対策

 副業を疑われるのも煩わしいという場合、対策として、副業に係る住民税を普通徴収にする方法があります。

 普通徴収とは、住民税を納付書などを用いて自分で納付する方法です。普通徴収にすれば、当該税額は会社には通知されず、会社は自社の給与に係る住民税のみの通知を受けるため、税額が多いと気付く可能性すらなくなるのです。

 普通徴収にするには、確定申告書の住民税の納付方法の欄に「○」を付けるだけです。ただ、役所も人間の仕事ですからミスが無いとも限りません。どうしても心配なら役所に間違えないようにと確認するしかないでしょう。

 また、副業が給与の場合には、普通徴収にできるかは、事前に役所に相談・確認した方がよいでしょう。

4、副業がバレたらどうなるのか

 副業バレを心配する人の中には、バレタときの懲戒処分などを心配している人もいるのではないでしょうか。しかし、基本的には、懲戒処分はなされない可能性があります。

 会社が懲戒処分をするためには、予め就業規則などで懲戒事由、懲戒手段を明定しておかなければならないのです(最判平成15・10・10労判861号5頁)。

 もっとも、副業・兼業を就業規則で禁止している例が少なくありません。しかし、当該禁止規定があったとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは、禁止違反にあたらないと限定解釈されます(東京地判平成20・12・5判タ1303号158頁)。

 例外的に副業の禁止が可能となるのは、副業・兼業が競業にあたる場合や、本業に支障を生じさせるような態様の場合等、客観的合理的理由がある場合に限定される(京都地判平成24・7・13労判1058号21頁)。

 「労働時間以外の時間をどのように過ごすかは基本的に労働者の自由であるべきこと、職業選択の自由の保障、就業形態の多様化等を考慮すると、使用者は当然には副業・兼業を禁止し得ないと解すべきであろう」(荒木尚志『労働法 第4版』(有斐閣、2020年)501頁)。

 上記限定的に懲戒処分が可能な場合には、就業規則等に定めがあれば、懲戒解雇まで可能性はあることにはなる。

 余談ではあるが、上記で挙げた労働法の書籍は最新の情報も盛り込まれており、非常に参考になる。労働法関係で自らの権利を守り不利益を被らないためには最低限の知識は必要であり、同書は手元に置いておいて損は無いだろうと思う。

労働法〔第4版〕 [ 荒木 尚志 ]価格:6,600円