令和3(2021)年4月1日現在の法令に基づく
目次
1、ふるさと納税の概要
(1)制度創設の背景
(2)制度概要
(3)寄付先はどこでもよい
(4)ふるさと納税の流れ
2、ふるさと納税のメリット
(1)寄付金控除―節税効果
(2)返礼品
(3)ワンストップ特例―確定申告不要
3、寄付額の上限・限度額
(1)寄付金控除の上限
(2)限度額とは?限度額を超えたら?
(3)限度額の算出方法
(4)株や投資信託の限度額への影響
(5)自己負担2千円の意味
4、おわりに
1、ふるさと納税の概要
(1)制度創設の背景
ふるさと納税は、都市部の自治体の税収が増える一方、地方の自治体の税収が減少していることを背景に、「自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思でいくらかでも納税できる制度」はできないかという問題提起から議論を重ね創設された制度です。
厳密な「ふるさと」の証明の困難性や納税とすることの法的困難性のため、任意の自治体への寄付という形で制度が作られました。
詳しい制度創設の背景などは、総務省ホームページをご参照ください。
総務省|ふるさと納税ポータルサイト|よくわかる!ふるさと納税
(2)制度概要
ふるさと納税は、納税という名称が用いられていますが、その中身は、地方公共団体(都道府県、市区町村)への寄付です。寄付として、住民税については寄付金税額控除(地方税法37条の2第1項、314条の7第1項)、所得税については寄付金控除(所得控除。所得税法78条)となります。
※所得控除、税額控除の違いについては、用語解説・用語集
限度額までは、所得税と住民税から寄付額-2千円が全額控除される仕組みになっています。
また、自治体によっては、返礼品として、寄付額の30%以下の特産品のお礼があります(地方税法37条の2第2項、314条の7第2項)。
つまり、2千円で返礼品という寄付額の30%以下の特産品を買っているような効果があるのです。これが、ふるさと納税がお得と言われる所以なのです。
巷では、ふるさと納税は住民税の前払いなどと表現されますが(限度額以下の場合、結果だけに着目すればそうとも見得るが)、寄付金控除ですので、法的には節税効果があると言えます。
(3)寄付先はどこでもよい
ふるさと納税という名称から、寄付先は生まれ育った自治体に限られるのかと誤解する可能性もありますが、寄付先はどこの自治体で良く、自由に選択することができます。
自分を育んでくれた自治体にという理念から創設されましたが、どこを「ふるさと」と考えるかは納税者の意思を尊重すべきとの観点から自由に選択できる制度が採用されました。
※全ての自治体が対象となっているわけではありません。総務大臣が指定した自治体が対象です。例えば、東京都などは対象外となっています。
参考資料
(4)ふるさと納税の流れ
ワンストップ特例を利用しない場合
①寄付先自治体を選ぶ:ふるさと納税サイトなど複数のウェブサイトもある。
②ふるさと納税する:確定申告で必要となる受領証が交付される。
③確定申告をする:受領証の添付が必要。
④所得税、住民税から控除される:源泉徴収などで徴収されている所得税がある場合は還付される場合もある。
ワンストップ特例を利用する場合
①寄付先自治体を選ぶ
②ふるさと納税する:ワンストップ特例の申請書も提出する。
③住民税から控除される
2、ふるさと納税のメリット
(1)寄付金控除―節税効果
ふるさと納税は寄付金控除ですので、節税効果があります。
限度額までは、寄付額-2千円の全額が所得税と住民税から控除されます。
例)5万円寄付すれば、4万8千円税金が安くなります。
内訳:所得税からの控除が、4万8千円×所得税の税率、
残りが住民税から控除。
※ワンストップ特例を利用した場合は、所得税からの控除分も合わせて住民税から控除されます。つまり、前記例では、4万8千円が住民税から控除されるため、所得税からの控除はありません。また、所得税においては、税額控除ではなく、所得控除です。
(2)返礼品
多くの自治体が寄付に対するお礼として、寄付額の30%以下の特産品を提供しています。
そのため、ふるさと納税の限度額までは、実質的に、2千で寄付額の30%以下の特産品を購入したのと同じ効果を得ることができるのです。
(3)ワンストップ特例―確定申告不要
ふるさと納税を行った場合、原則としては、確定申告をする必要があります。
しかし、給与所得者で確定申告をする必要が無い場合は、予め、ワンストップ特例の申請をすることで確定申告が不要となります。
反対に、確定申告をすると、ワンストップ特例が無効となってしまうため、確定申告する際は忘れずにふるさと納税についても申告する必要があります。
ワンストップ特例を利用するためには、給与所得者であること、ふるさと納税先の各自治体に特例の適用に関する申請書を提出すること、ふるさと納税先の自治体が5団体以下であることが必要です。
なお、特例の適用申請後に、転居による住所変更等、提出済の申請書の内容に変更があった場合、ふるさと納税を行った翌年の1月10日までに、ふるさと納税先の自治体へ変更届出書を提出する必要があります。
3、寄付額の上限・限度額
(1)寄付金控除の上限
寄付金控除の対象となる寄付額の上限は、
所得税は、総所得金額等の40%が控除の上限です(所得税法78条1項1号括弧書き)。
住民税は、総所得金額等の30%です(地方税法37条の2第1項柱書括弧書き、314条の7第1項柱書括弧書き)。
これらの額を超えて寄付することは可能ですが、税金が安くなるという節税効果はありません。
所得税法78条1項
居住者が、各年において、特定寄附金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
一 その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額)
二 二千円
地方税法314条の7第1項
・・・寄附金の額の合計額(当該合計額が前年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の三十に相当する金額を超える場合には、当該百分の三十に相当する金額)が二千円を超える場合には、その超える金額の百分の六・・・に相当する金額・・・を当該納税義務者の第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。
(2)限度額とは?限度額を超えたら?
俗に言うふるさと納税の限度額とは、ふるさと納税額-2千円の全額が控除される上限です。言い換えれば、自己負担が2千円となる上限です。
限度額を超えても、自己負担が2千円より増えるだけで、寄付金控除の上限までは、住民税は、超えた額の10%、所得税は超えた額×税率だけの控除を受けることができます。
例)限度額5万円に対し、6万円ふるさと納税した場合
→4万8千円の控除+1万×10%+1万×所得税の税率 が控除されます。
(3)限度額の算出方法
地方税法上、ふるさと納税による寄付金控除は、寄付額-2千円の10%(基本分という)に「特例控除額を加算した金額」とされています(地方税法37条の2第1項柱書括弧書き、314条の7第1項柱書括弧書き)。
そして、特例控除額は、所得割の額の20%を超えるときは、20%に相当する金額とするとされています(地方税法37条の2第11項柱書括弧書き、314条の7第11項柱書括弧書き)。
つまり、限度額は、特例控除額の上限であり、その上限は、所得割額の20%と言うことになります。
特例分の算出方法は、次の通りです。
特例分=(ふるさと納税額 – 2000円)×(100% – 10%(基本分) – 所得税の税率)
この特例分が、所得割の20%となるときが上限ですので、ふるさと納税の限度額は次のようになります。
特例分≦所得割の20%
(ふるさと納税-2000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)≦所得割の20%
所得割の20%
ふるさと納税≦ ———————————————————————— +2000円
(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
地方税法314条の7第1項
・・・特例控除対象寄附金を支出し、当該特例控除対象寄附金の額の合計額が二千円を超える場合には、当該百分の六・・・に相当する金額に特例控除額を加算した金額・・・を当該納税義務者の第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。
地方税法314条の7第11項
第一項の特例控除額は、・・・特例控除対象寄附金の額の合計額のうち二千円を超える金額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た金額の五分の三(・・・)に相当する金額(当該金額が当該納税義務者の第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、当該百分の二十に相当する金額)とする。
なお、住民税は、都道府県民税と市区町村民税からなり、寄付金控除の基本分は、前者が4%、後者が6%の合計10%です。都道府県民税についても6%が4%に変わるだけで、ほとんど規定は同様ですので、条文の引用は省略します。ご自身でご確認ください。
(4)株や投資信託の限度額への影響
特定口座源泉徴収ありで確定申告しない場合は、ふるさと納税の限度額に影響しません。なぜなら、限度額は所得割額に連動し、源泉徴収されて終わりであれば、所得割額は変わらないからです(地方税法313条14項、314条の7第1項柱書、同項1号、同条11項、32条14項、37条の2第1項柱書、同項1号、同条11項、23条17号)。
確定申告すれば、所得割額が増えますので、ふるさと納税額の限度額が増えます(地方税法313条15項ただし書、314条の7第1項柱書本文、同項1号、同条11項、32条15項、37条の2第1項柱書、同項1号、同条11項)。
(5)自己負担2千円の意味
寄付金控除は、年間の寄付額が2千円を超える場合に当該2千円を超える部分について控除の対象とするという制度になっています。
年間の寄付額-2千円ですので、寄付ごとに-2千円ではありません。
4、おわりに