税法上の扶養とは
令和2年(2020年)4月1日時点の施行法令に基づく
一、はじめに
扶養の問題は、特に学生にとっては所得税がかかるかという問題と並ぶ関心事だと思います。税法上の扶養は、103万円といわれますが、この考え方は危険です。税法上の扶養には所得要件以外にも要件がありますが、特に所得要件について解説していきます。
二、目次
三、税法上の扶養とは
所得税法84条1項
「居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、
その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、
その控除対象扶養親族1人につき38万円
(その者が特定扶養親族である場合には63万円とし、
その者が老人扶養親族である場合には48万円とする。)を控除する」
税法上の扶養の問題は、対象の親族を扶養している者が扶養控除を受けることができるか否かの問題です。
つまり、自分自身ではなく、自分を扶養している者(親など)が所得控除を受けられるかの問題です。そのためには、自分自身の所得について要件があるというものです。
なお、控除対象扶養親族とは、12月31日での年齢が16歳以上の者、特定扶養親族とは19歳以上23歳未満の者、老人扶養親族とは70歳以上の者をいい、所得控除の額が異なります。
四、税法上の扶養の要件
所得税法2条34号
扶養親族とは、「居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)・・・でその居住者
と生計を一にするもの・・・のうち、合計所得金額が48万円以下である者をいう」
要件①
配偶者以外の親族である。
→6親等内の血族及び3親等内の姻族(民法725条1号・3号)。
要件②
生計を一にする。
→平たく言えば、財布が一緒であること。別居していても、生活費や学費などを提供していたり、余暇に帰省し生活していたりするときは、同一生計といえます。
要件③
青色事業専従者として給与の支払を受けていない。白色事業専従者でない。
要件④
年間合計所得が48万円以下である。
五、103万円?48万円?
既に述べたように、所得税法には103万円という数字は出てきません。「合計所得金額が48万円以下」との規定です。ここを理解するためには、所得と収入の違いを理解する必要があります。
1、103万円とは
103万円というのは給与収入のみの場合の収入金額を指します。給与収入が103万円の場合、最低の55万円の給与所得控除があり、給与所得は48万円になり、「合計所得金額が48万円以下」の要件を充足するのです。
給与所得金額=給与収入-給与所得控除
給与所得の場合は、給与所得控除後の金額が給与所得の金額とされています(所得税法28条2項)。
一方、給与以外の所得は、基本的には、収入から必要経費を差引いた金額とされています(所得税法23条~35条)。給与の場合は、必要経費を観念し難いため、給与所得控除が必要経費の代わりを担っているのです。因に、収入とは「収入すべき金額」とされています(所得税法36条1項)。
給与以外の所得金額=収入-必要経費
2、大事なのは所得48万円
判断基準は、あくまでも所得48万円です。
給与の場合も、給与所得控除があるから収入103万円で所得が48万円になるというのであって、所得48万円が基準とされていることに変わりはありません。103万円で考えると、給与以外の所得を得たときに間違いを生じさせる危険があります。
例えば、
給与収入-給与所得控除=給与所得
雑収入-必要経費=雑所得
事業収入-必要経費-(青色申告特別控除)=事業所得(青色)
給与所得+雑所得+事業所得=合計所得≦48万円
→「合計所得金額が48万円以下」のため扶養内。
なお、合計所得金額は、基本的には、収入-必要経費(給与所得控除)で求めた所得の合計であり(所得税法2条22号)、その他の所得控除(所得税法72条~86条)をして求めた課税所得とは異なりますので注意が必要です。ただ、損益通算や青色申告特別控除は可能です(所得税法69条1項、租税特別措置法25条の2第1項柱書)。
六、まとめ
103万円は忘れましょう。
収入-必要経費が所得。
「合計所得金額が48万円以下」がポイント。